2009-09-01から1ヶ月間の記事一覧

「20分耐久文章書き」に私も参加してみたよ!

「中野さんと僕」をお届けの途中ですが、いきなり20分耐久文章書きに参戦です。20分耐久文章書きってのは、20分間野放図にテキストを打ち倒すというそれどうなんだ的なお遊びですが、感覚をテキストに変えることに執着の強い人間にとっては、これまた楽しい…

中野さんとお別れ

時折僕は思う。飛行機というものが、もっと、遅ければいいのにと。ライト兄弟のころのように、ゆっくり、ゆったりと飛んでくれれば。中野さんは午後の日差しを受けた、きらきら光る雲海に目を細めている。 「きれいですね」「そうだね」 それ以上の会話が、…

中野さんと天都山

地元の人の言うことは、やっぱり完全にアテにしてはいけなかった。「天都山行きのバスに乗って、一番上にあるのが北方民族博物館、すぐ下がオホーツク流氷館、さらに下に網走監獄があるよ」 「北方民族博物館……から、網走監獄まで歩けますか」 「ほら、バス…

中野さんと能取岬

中野さんがこの旅に来ることになる前から、旅の最後には、どこか果てのような、これ以上、どこにも行き場がないような、ところに行きたいと思っていた。 それで選んだのが「能取岬」だ。宿の人が言うには、レンタルの自転車で30分も走ればたどり着けるという…

中野さんとサンゴ草

「センスないですっ!!」よく晴れた観光日和だというのに、中野さんが怒っていた。彼女を怒らせているのは売店のスピーカーから大音量で流れている「サンゴ草咲く日にほにゃほにゃ〜」という、ご当地歌謡曲だ。「なんで同じ曲をエンドレスですかループです…

中野さんと談話室にて

その年季の入った民宿は、別館にライダーハウスがあり、談話室は旅慣れた人たちのさざめきで満ちていた。僕と中野さんも、その隅っこに陣取って、インスタントコーヒーをすすりながら、今日のライブの興奮を分かち合っていた。まだ胸の奥に、ギターの、鈴の…

中野さんと釧網線

9時5分発の「快速しれとこ」は通路まで埋まった満員となった。僕らはこの列車に乗って釧路から網走を目指す。「人でいっぱいですね」 「釧路湿原や知床に行くんだろうね」旅行4日目、クロスシートの向かいの中野さんの目が少し重そうだ。僕も身体の表面に疲…

中野さんとコインランドリー

旅も3日目ともなれば、そろそろ洗っておきたいものもある。僕などは最初からそれを見越して荷物を少なく用意してきた。ランドリールームの前でぼんやり、ぐるぐる回る洗濯物を見つめていると、中野さんがひょいと顔を出した。そのまま僕の隣のベンチに腰掛け…

中野さんと雪虫

狩勝峠を越えてたどり着いた道東、釧路駅はうみねこがニャアニャアと鳴いていた。今朝出てきた富良野駅が「北の国から」を流していたことを考えると、ずいぶんな違いだ。ホテルに荷物をたたき込み、僕らは釧路の街へと歩きだした。観光案内所で運命のように…

中野さんと国道38号

ライブが終わり、三々五々、車が駐車場から出ていく中、僕と彼女だけが暗い夜道を歩きだした。行きに通った川沿いの道を覗いたら「げぇっ!げぇっ!」と、正体不明の鳴き声が聞こえてくる上に、熊に鼻をつままれてもわからないほどの暗さだったので、遠回り…

中野さんと空知川

富良野の土地感覚がないものだから、ライブ会場との直線距離で適当に選んだ宿は、スキー場が真ん前にあるような、山の上にあった。その、山をだらりだらりと下って歩いて、空知川沿いの道を歩く。歩道されてるかどうかも定かでない、砂利だらけの道、右手に…

中野さんとジェット風呂

ライブの後、会場のそばに今風の日帰り温泉があったのでさっぱりしてから帰ることにした。湯浴み後、ロビーで涼みながら今日のライブのことを話しあう。七拍子の不思議なリズム、古い石造りの倉庫を改装した箱の天然の音響、美しい模様の入ったGibson、珍し…

中野さんと乱気流

今日の飛行機は揺れるおそれがあるのだという。アナウンスが淡々と告げている。台風14号の影響だろうか。離陸前の轟音の中で、中野さんがおそるおそる僕の顔を見上げる。「揺れるって、どんなふうなんでしょうか」ここぞとばかりに、僕の飛行機初体験、観測…

中野さんと僕と5泊6日

中野さん、という女の子と知り合ったのは本当に変なきっかけだった。ソプラニーノリコーダーという笛がある。ソプラノより一回り小さな、低いファから高い高いレまで出る、ちょっとだけマイナーな存在のリコーダー。小学校で使うのはソプラノ、中学になって…