下品短歌2009 午後3時ちんこが低くつぶやいた

午後3時、普段あなたは何をしていますか? そのとき、あなたの宝物はどうしていますか? 柔らかなボクサーショーツに包まれて眠っている。それとも、風通しのいいトランクスの中で静かに揺れている。つぶやいてくれる素敵な息子がいらっしゃらない方には、この名言をご紹介しましょう。「心のちんこを勃てろ!!」

午後3時ちんこが低くつぶやいた あれがデネブアルタイル、ベガ @ryp_a

これはこの一首の説明をする前に、上の句について触れておくべきでしょう。「午後3時」という時間は、例えば午前2時、丑三時といった時間と比べると、不確定というか、不安定な条件です。午前2時につぶやくことといえばまず大抵「死にたい」とか「寂しい」だと思うのですが、午後3時のつぶやきには、敢えていうなら中途半端な疲労感、といった共通項しか見出せません。挑戦者はこの設定をうまく生かしきるかどうかを試されているわけです。
この作品は僕には特に印象的でした。一見すると、この星座への言及は読者に夜を連想させます。満点の星空のした、きつめのブリーフからやっとのことで頭を出した彼は、澄んだ空気を胸いっぱい吸い込み、「外の世界は美しかった」、そう満足げにつぶやくのです。仮に上の句が「午前2時、ちんこが低くつぶやいた」であった場合、それはそれで十分に秀逸な作品であったといえましょう。
しかし、これはあくまで午後3時の物語です。午後3時に星は見えません。午後3時にあなたの陰茎はどうしていますか? 職場や学校などで、きつめのブリーフの中に押し込められ、息も絶え絶えになっているに違いありません。鳴り止まない電話や抜き打ちで出された漢字のテストのせいで、主人からもその存在を反故にされた午後3時の陰茎は、マッチ売りの少女が夜の闇に幻影を見るかのように、きつめのブリーフの中の闇にいつか見たあの星空を想い、息絶えるわけです。まあ学生の場合、5分後にとなりの席の女の子の脇の下からブラが覗いているのを発見してあっさり生き返ったりするけど、僕にはもうそんな青春は戻ってこない(中略)あくまでやるせない悲劇としてのこの一首、上の句自体の面白さを存分に引き出した傑作といえます。【秋ひもの】

午後3時ちんこが低くつぶやいた たまにはこっちに飲みにこないか @aya_h

世間一般の会社の定時はまあざっくり言って午後5時〜7時くらいでしょう。だから、不意にサラリーマンが、人さびしく誰かを想う時間、それが午後3時です。昼下がりと夕方の狭間のけだるい時間のように見せかけて、実に寂しい空虚な時間であります。誰よりも己の寂しさを知ってくれている我が息子の飲みの誘い。息子なのに、離れた実家に住んでいる親父の誘い方のような哀愁のセリフ回し。これには実に慰められます。しかし、彼が飲ませたいものは酒なのか、精子なのか。長年の付き合いでもそこは明かしません。かすかに緊張ただよう午後でもあります。そんな、けだるい一瞬と親しみを切り取った佳品。【ハゼ】

午後3時ちんこが低くつぶやいた おやつもおかずももうたくさんだ @kohimeka

おこめが……おめこが欲しいんだね。お姉さんの食べさせてあげるよ……さぁ来て(くぱぁ)ですねわかります。放課後ふぅタイムな青少年の即物的な倦怠や不全感が抜き飽きた年齢詐称女子高生ヌードグラビアのごとくに漂う。上手すぎ。【遠野サンフェイス】

午後3時ちんこが低くつぶやいた あした右手で未来もつかめ @ch1haya

一見シンプルながら下品短歌の潜在テーマ「雄ガキの奔放と閉塞・不逞と純情」の匂いをがっちり捉えてるうえに、上の句の内省的なトーンをそのまま推進力に転化してストレートな前向きさへと見事に突き抜けきっている。キングズロードど真ん中を往く傑作。【遠野サンフェイス】

午後3時ちんこが低くつぶやいた 無能ですまねぇ画面の外じゃ @ryp_a
午後3時ちんこが低くつぶやいた 「クイックショットそれが俺の名」 @halciondaze
午後3時ちんこが低くつぶやいた そのカルピスに混ぜて飲ませろ @phorni