東京マッハvol.4「帰したくなくて夜店の燃えさうな」

押忍! はてな記法を忘れました!
日記を書きたくなる面白いイベントに行ったので1年ぶりの日記です。
公開句会イベント東京マッハvol.4に行ってきました。場所は縁がありそうでなかった新宿ロフトプラスワン。開場ちょうどに入り口に行くと、なんだか文学フリマの2Fみたいな雰囲気。呑まれる。びびる。挨拶とか飛び交ってるんだもん。
中に入ると選句用紙がもらえます。提出用と控えの2枚。有り難いです。

※手書きの青字は後から書き込んだ私の字です。長嶋さんをちょこちょこ長島さんと誤記しており申し訳ありません。

書いてあるのは本日の参加者、6人×5句の俳句、合計30句。この中から特選(ベスト)1に☆、並選(好きな句)6区に○、逆選(文句つけてやりたい句)1句に×をつけ、スタッフのお兄さんお姉さんに提出。このときポイントなのは、必ず特選1、並選6、逆選1を選ばないと無効になること。正味10分、20分の間で初見の30句を見てその中から8句選ぶって結構重たい作業なんですよ。でも、必ず8! って言い聞かせると、より真剣に選句ができます。なんでもいいから1〜8句程度、なんて言われたら読みが甘くなる。読みが甘くなると句会はつまらなくなる。

あ、申し遅れましたが、私、俳句はほぼ初めてです。

イベント開始。狭い壇上に本日の投句者ずらり6人。メンバーは俳人、作家、ゲームクリエイター、著述家と多彩です。そして壇上での飲み物の注文と乾杯を終えて、もう選!が始まります。
自分の選んだ8句を発表していくのですね。その時「(名前)選」と、最初に言うのが格好いいのです。壇上でも「アムロ行きます!」みたいだよね、と話題になっておりました。

さて、実際壇上の皆さんがどんな句を選ばれたかについては、もう詳細に書いて下さってるblogがあるので、そちらにお任せします。
http://d.hatena.ne.jp/hiloco/20120710

では、私も選評を。

ハゼ選!(これが打ちたかった)

☆お堀にアヤメ人に本来勇気あり
 評:「人に本来勇気あり」というフレーズがアヤメのように背がすっと伸びていて格好いい。勇気なんて言葉を扱ってるのにちっとも嫌味でない。素敵。あとデートの情景が見えました。アヤメの咲く城跡公園を散歩する若い二人、勇気を奮って……なんて。

○指鉄砲撃って先輩あとずさる
 評:吉本新喜劇っぽい絵。自分で「バーン!」って人を撃っておきながら、自分で胸を押さえて「ううっ!」「誰にやられた!」とか延々1人芝居しちゃうような先輩。うざかわいい。壇上では異性の先輩で恋と絡めた話題が延々でてきましたが、私は同性のほうが好き。あるいは百合。

○炎昼にファンファーレぽい何か聞く
 評:暑いさなか住宅街を歩いていると、あちらこちらからテレビの音が聞こえてくる。甲子園の応援、あるいは競馬のファンファーレみたいな何かがふと耳に入る。でも陽炎たつほどの炎天下では幻のようなできごと。そんな耳を刺激する句。

○蜘蛛というより蜘蛛の都合をみておりぬ
 評:最後まで特選かどうか悩んだ句。蜘蛛が出たら、蜘蛛の行方や振る舞いが気になるのであって蜘蛛の足が本当に八本あるかどうかすらも見ちゃいません。「確かにねー」という納得感はあったのですが、それ以上がなかった気もして並選に。

○未使用のストロー軽し夏の暮
 評:ストローを添えられていたけど、そのストローを使うのももどかしくジュースを飲み干す夏の暮、というイメージ。暮だけどまだお酒じゃない。気の置けない下戸同士の集まり、あるいはライダーやドライバーの一休み、子供同士もあるかも。いろんな関係性が次々と浮かぶ句。

○千思万考ついに野を飛ぶ夏帽子
 評:夏帽子は1つではなく、複数個だと思ってました。夏の木陰で将棋を差している2人。勝負は白熱、見守るほうも白熱、誰も身じろぎしないまま時間が経ち、決まり手の瞬間に強風、全員の帽子も駒もが吹き飛んでいく。千思万考っていう上の句がいかにも鈍重に考えている、って言う感じの溜めがあって面白い。

○向日葵の中に仏が多すぎる
 評:これも特選にするか悩んだ句。北海道を旅行した時、宿に見事な向日葵畑があってそれを褒めたらオーナーがぶすっと「緑肥だよ」と。いくら綺麗に咲いても、いくら種を成らせてもそのままトラクターで押し倒されて鋤かれるだけの向日葵。あるいは最近だと除染のために植えられた向日葵。そういう連想とあいまって向日葵の本数分だけ仏が立っているようなものだよな……と一番気持ちの動いた句でした。

×微炭酸?俺が? 初めて言われたよ…
 評:許せない! 微炭酸?の後にはスペースがないのに、俺が?の後にはスペースがある! 初めて言われたよ…の三点リーダが1個しかないし、なんか手書きっぽいっていうか変なフォント! わー耐えられん! そういう見た目の嫌な気持ちと、句から立ち上がってくる雰囲気、主人公の性格が見事に合致して、うまいこと乗せられてるんだろうなと思いつつも、やっぱりこれが逆選です。

全員の選句が述べられると次は点盛り。集計です。そして本日一番点が集まった句である"蜘蛛というより蜘蛛の都合をみておりぬ"から、選評が述べられ、そして最後に、作者の名乗り!
この名乗りが、またいかにも楽しそうで。犯人は私です! って名乗り上げる瞬間。あるいはカードゲーム「汝は人狼なりや?」の1プレイ終えて「狼でしたー」「狂人でーす」「真占いだったのに…」と次々に自分の役割を明かす瞬間にそっくり。

この句会全体の流れ、ムードがとにかくいい。司会の千野さんがゲームマスターとなり、5人の腕のいいプレイヤーたちがどんどんシナリオを回していく上質なTRPGのプレイングみたいです。見ているだけで白熱するし、自分も事前に力を入れて選句しているだけに心から頷いたり、意外な選評に驚いたり。

ただその一方で、TRPGリプレイを読んでいるような寂しさもあるんです。どんなに名プレイであっても、自分がそのプレイングに参加することは出来ない。直接選評を述べられたら。俳句が作れるようになって、自分の句も混ざっていたなら。

2回の休憩を挟み、3時間弱の句会はあっと言う間に終了。千野さんのご本「俳句いきなり入門」(これが私に俳句をやってみたいと思わせるキッカケ)2冊目を購入して退場。

俳句いきなり入門 (NHK出版新書)

俳句いきなり入門 (NHK出版新書)

そのあと一人飲みながら「句会に参加してみたいなー、でもどうやったら自分に合う場が見つけられるのだろう? TRPGだってボードゲームだって大学の討論ワークだって、結局はメンバー次第の側面が大きいし……」とかうだうだ考えこみ。
でもお酒も美味しかったし、インターネットの時代なのできっとなんとかなるでしょう。それよりも「モテる句」が作れるかどうかを心配せねば。