下品短歌2009 初潮まだ? 尋ねたあの日秋の空

ちんこのない皆様、お待たせしました。今度の題は初潮です。女の子のからだの一大イベントです。秋の空、茜空。尋ねる側、尋ねられる側の紅潮。綺麗な彩りの上の句です。この上の句は特に人気が高く、数多くの下品短歌が寄せられました。帰りたい晴れた秋空のあの日はありますか。たとえ黒歴史でも、たまには帰ってみませんか。

初潮まだ? 尋ねたあの日秋の空 両手いっぱい赤飯抱えて @tana_p

下品短歌においてもっとも重要なことは「人を描く」ことです。あなたがその三十一文字の世界に産み落とした登場人物に、「人」としてのリアリティはありますか?ネタや設定も重要ですが、読者は例えば、陰茎を握る少年が走るという事象ではなく、その彼の目尻に光る一粒の涙を見て、心動かされるものなのです。
今回の下品短歌のお題の中では、この「初潮まだ?」の上の句に、叙情とまではいえないまでも下品の中にもひらと落ちる「涙」を感じさせる作品が集中したように思います。下品短歌初参加のtana_pさんは全般的に新人離れした安定感で我々選者の注目を集めましたが、この傑作ぞろいの激戦区である「初潮まだ?」においてもその存在を強くアピールしました。初潮という言葉から赤飯への連想はありふれたものですが、「両手いっぱい」というあたたかくやわらかな言葉の絶妙な導入により、この赤飯仮面氏に、変態ではあるかもしれないが心優しく、まっすぐで憎めない、生き生きとしたパーソナリティを与えることに成功しています。満面の笑み。両手が塞がるほどに大きなお櫃にいっぱいのお赤飯。普通なら初潮が来たかどうか確認をとった後で炊飯にとりかかるべきだと思うのですが、そこに気付かない愚鈍さも含めて、血の通った愛すべき変態。しかしリアルな人間のすむ三十一文字の世界、そこで生まれる悲しみもまた真実。「おにいちゃんの気持ちはほら、こんなに、ゆげがでるほどほかほかで、こんなにおっきくて」そこまで言いかけ、恐怖に凍り付く女の子の表情に気づき、我にかえる赤飯仮面。お赤飯をお櫃ごと落ち葉の上に放り出し「ごめんよ!ごめんよ!!」と泣きながら漕ぐ白い自転車を染める夕陽は、いつもより少しだけ赤かったそうな。【秋ひもの】

初潮まだ? 尋ねたあの日秋の空 けんけんぱーのリズムにのせて @kazenaga

実際に口ずさんでみましたけど、リズムに強引にのせてる感じが(笑)。それと同じ強引さで、見も知らぬおっさんが児童公園の子供達の中に突然割り込んできたのでしょうか。けんけんぱの仲間入りをしたつもりが、気がつけばけいどろならぬ本物の警察官とリアル鬼ごっこ。僕ならばけんけん「ぱー」で両足をばっと開くのを黙って見守ってるだけでしょうから、その勇気に乾杯です。【くるぶしあんよ】

性教育で習ったばかりの言葉が膨らむ好奇心に駆られて少年の口からふと零れてしまったのか。それが失楽園の黙示であるとさえ気付かずにいた子供時代最後の日の情景が「けんけんぱー」で胸の痛みとともに浮かび上がってくる。しにたい。【遠野サンフェイス】

初潮まだ? 尋ねたあの日秋の空 狩られる意識死ね糞兄貴 @tomo1979

う、羨ましくなんかないぞ。ほんとだぞ。と強がってみても、兄妹の不穏で微笑ましい日常が僕の胸を刺し貫きます。ああ、いいなぁ……(指をくわえながら)。下の句の「―き」「―き」と重なる音の堅さが、上の句と対照的で事態の急転と妹さんの気の強さを感じさせます。イメージとしては、「初潮」の紅、顎を蹴り上げられて視界いっぱいに一瞬広がる「秋の空」の青、それをたちまち上書きする脳震盪の赤、そして暗転の黒、という色彩変転の妙味も楽しめます。最後の「糞兄貴」は茶色のトッピングでアクセント。さらに妹さんがスカートをはいてたなら、ブラックアウトする視界の向こうで白がチラチラと、などと想像してる僕も蹴ってもらえないかしら(指をまだくわえながら)。【くるぶしあんよ】

初潮まだ? 尋ねたあの日秋の空 ババァは答えた 「むしろ終わった」と @mittyan

質問する相手選べよ! 俺「むしろ」っていう副詞のここまでひどい使用例見たことないですよ。ちなみについったーでこういうことをポストしたら、即座にみっちゃんからリプライが返ってきました。「誰でもいい 死ぬまでに一度聞きたかった ねぇねぇ?あのさ?初潮まだかな?」……みっちゃん……その、参加することに意義がある的な思考はどうかと思うんだ……。 【mk2】

初潮まだ? 尋ねたあの日秋の空 更年期さえ終わる冬空 @kazenaga

同じ「終わった」がテーマになっていても、ここまで違いが出るのか、という好例です。この作品では、話者はおそらく女性。そう考えると一人の女性の過ごしてきた時間というものが、パースペクティブとして見えてくるような、静かな情景が感じ取れます。同じ上の句からここまで性質の違う作品が生まれてくる。これもまた下品短歌の醍醐味であります。あとみっちゃんのひどさが際立つ。どっちにしろ「初潮まだ?」って聞いた変態は存在しているわけですが。 【mk2】

初潮まだ? 尋ねたあの日秋の空 なんか栓すりゃ止まるかな  @tana_p

止めてどうすんだよ。
……実はこの上の句、お題として出したのは俺だったんですけど、けっこう自信あったんですよ。変態性と情緒をうまく兼ね備えつつ、下の句の自由度も高い。その自由度が仇になりました。なにがひどいって「なんか」がひどい。コルク栓でもティッシュでもなんでもいいじゃないですかこれじゃ。初潮に対して男性が感じるロマンチシズムもそこはかとなくエロティシズムも、栓した瞬間鼻血と同レベルです。貴様はッ!初潮をッ! 嘗めたッ! いやそれだとかえって本望か。 【mk2】

初潮まだ? 尋ねたあの日秋の空 どっちのほうがおじさんはいいの? @TLW_kashur

質問に質問で返すのは悪いことです。もうほんとに悪い子ですね。無邪気な顔して悪意を忍ばせてて。しかし、そういう悪い子に問い返されて言葉を詰まらせながら「わ、悪い子だなぁ」と魂を振るわせてしまう大人こそ悪い人。そういう人にとってこの悪い子はとてもいい子です。こうして駄目な大人を触媒に、女の子の評価は反転するのですが、大人自身の悪は変わらぬまま。そんな我が身を反省することよりも、「どっちのほうがいいんだろう?」と真剣に悩む方を選んでしまう罪深さに、人は深く共感するのでしょう。僕はどっちもOKです。【くるぶしあんよ】

初潮まだ? 尋ねたあの日秋の空 視聴覚室花柄ポーチ @ch1haya
初潮まだ? 尋ねたあの日秋の空 みみうちひとつ赤い実はじけた @halciondaze
初潮まだ? 尋ねたあの日秋の空 君はわらってうそをついたね @TLW_kashur